Made by Hand - ポンコツDIYで自分を取り戻す

大学図書館主催のビブリオバトルなるものに参加した記録。


「物を作れ、失敗せよ」

取り上げた本はこちら。Mark Frauenfelder著 金井哲生訳(2011)「Made by Hand - ポンコツDIYで自分を取り戻す」(オライリー社)。帯に書かれた上の一言に、この本の良さすべてがが凝縮されている。

この本を読んでDIYが上手くなるかというと、まずそんなことはない。著者が張り切って取り組んだDIYプロジェクトが日記のような書き味で多数紹介されているのだが、鶏小屋を作ったりハチを飼ったりと、とてもじゃないが日本では簡単に出来ないものも含まれている。図や挿絵もほとんど無く、いわゆるマニュアル本とは全く違うものである。

では、僕はこの本のどこに惹かれたのか。それは、失敗を許容する精神が、全編に渡って丁寧に、そして茶目っ気たっぷりに説かれていることである。著者は2人の娘を持つ一家の父親だが、突然思い立って始める日曜大工や庭仕事には、常に妻の厳しい視線がつきまとう。あんたソレなんなのよ、きれいじゃないと容赦しないわよと叱責を受けながらも頑張る姿は応援せずにはいられない。そしてこのオッサン、本当にたくさん失敗する。

家族で夢の南国生活を目指すも身体を壊して帰国、たくさん買った除草剤を家の前に放置して盗まれる、作った小屋はガタガタで、しまいには飼っている鶏がコヨーテに襲われて娘を泣かす始末である。だけど、このオッサンはへこたれない。


著者の仕事は編集者であり、様々なジャンルのものづくり活動を取り上げる「Make:」という雑誌を刊行している。個人でものづくりに没頭する人々(Makerと呼ばれる)を取材するたび、彼らは口を揃えて「失敗することに価値がある」と言う。世の中にあるものを買って一時的な満足を得るだけの生活から、世の中には出回ってないが自分が本当に欲しいものをつくる生活へ。まだ世の中に無いものを作るのだから失敗して当たり前だし、むしろ失敗することで次にどうすべきかが見えてくる。何も恥じることは無いし、志を共にする人と失敗を共有することでより良い解決策が見えてくるかもしれない。

作中にはその道のアマチュアスペシャリストとでも言うべき人々が多数登場する。著者は彼らの技法全てを盗むのではなく、そのエッセンスと精神性を学び取り、「物を作り、失敗する」暮らしにのめり込んでいくのだ。

この本に出会った当時、毎週モノを作ってくることが研究会の課題だった。初めて触れる機材への戸惑い、他の人よりも面白くて創造的なものを作らなければというプレッシャー。自分の力不足を感じて凹む時期もあったが、そんなときにこのオッサンが力をくれた。妻に怒られたって、娘に泣かれたって、へこたれずに自分が良いと思えるモノを作り続ける。失敗を恐れるのではなく、それを価値あるものとして受け入れるようにアタマを切り替えれば、一時的には辛くてもその先に待っている喜びが見えてくる。おかげでくじけること無く最後までやり遂げることが出来た。この本は読者の心の支えになる可能性を秘めているのだ。

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型取りなんてやったことなかった僕の失敗作。一発目からうまく出来る訳が無い。でも2回3回と繰り返していくうちに、ようやくコツが見えてくる。


これは「自分ロウソク」というギャグだが、こんなものにピリピリ神経を尖らして根詰めたってしょうがない笑!失敗に寛容な態度が、つくる生活をエンジョイする助けになる。

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