これが最新のオシャレ都市迷彩だ
突然だが、あなたは普段乗っている電車の座席の柄を覚えているだろうか?通勤や通学でほぼ毎日使っているという人でも、はっきりと思い出せる人は多くないのではないだろうか。少なくとも僕は出来なかった。このTシャツを作るまでは。
※ 始発/終着駅で停車中、人のいない状態で撮影を行っています。
座席デザイン収集の旅へ
いつもと同じように電車に乗っていたある日、目の前で空いた座席の柄がふと気になった。普段はただ座りたい一心で背に向けて気にかけることも無かったが、よくよく見てみると中々趣深い柄をしているではないか。コレクター心がくすぐられ、そのまま電車に乗って座席デザイン収集の旅に出かけた。
東京メトロ日比谷線、東京メトロ日比谷線、みなとみらい線
京急線の特徴的な赤色など単色で無地のシートも多いが、良く目にするのは右2つのような四角形が並んだパターン。いかにも座席然とした独特なリズムを持った配置は、さながら座席界の黄金比とでも言えるだろう。
みなとみらい線、JR横須賀線、JR根岸線
単純な長方形の配置にとどまらず、格子や斜めのパターン、ステンドグラスのような配置も見受けられる。これらの柄を一通り模倣するだけで、IllustratorやPhotoshopの基本的な操作がマスターできるのではないだろうか。
みなとみらい線、みなとみらい線、横浜市営地下鉄ブルーライン
この辺まで来ると、もはや芸術と言って差し支えない。複雑なパターンのドットは画家クロード・モネを彷彿とさせるし、中央のアルゴリズミックな図形の配置はCGのエッセンスを取り込んでいるに違いない。ブルーラインの柄に至っては、暖かみのある色や不規則だが心地よい線の入り方が、夕暮れ時に稲を刈る田舎の風景を彷彿とさせて泣けてくる。
座席はオシャレだ
座席の収集を進めていくうち、その洗練されたデザインに感銘を受け、今までしっかりと見てこなかった自分が恥ずかしくなってきた。と同時に、頭の中にぼんやりとあるビジョンが浮かび上がってきた。
座席の収集を進めていくうち、その洗練されたデザインに感銘を受け、今までしっかりと見てこなかった自分が恥ずかしくなってきた。と同時に、頭の中にぼんやりとあるビジョンが浮かび上がってきた。
こういう柄の座席、ありそう
(写真は こちら より)
一部の座席の柄が、ちょっと小洒落たTシャツの模様とそっくりなのだ。カラフルだが気取りすぎず、人が座ることで生まれる不規則なパターンも含めて瓜二つだ。こういった座席の柄でTシャツを作ったら、もしかしてとってもオシャレなんじゃないだろうか。そして、そんなTシャツを着て席に座ったら、電車にとけ込むことが出来るんじゃないか。
というわけで、作ってみよう
今回は、最後に紹介した横浜市営地下鉄ブルーライン柄のTシャツを作ることにした。実際の手順だが、裁縫や染め物なんてほとんどやったことが無い人でも、とりあえずユザワヤに行けばなんとかなる(と思っている)。バイト代が入る直前で帰りの交通費が無くなりそうになりつつも、一通りの道具を揃えることが出来た。
染料にお湯と塩を加える…塩!?
説明書に書かれた通り準備を進めていく。綿を染めるときには塩を足すと良いらしい。マジか。染料が独特な匂いを放ち、同じ場所にいる人たちが冷たい視線を差し向けている気もしたが、気にせず作業を続ける。
染めと水洗いをした後、一日陰干しする
そして、命とも言える模様入れ作業(超アナログ)
全体がほんのり色づいてしまったが、2日程度でTシャツが完成した。
ご覧の通り、オシャレになりました
こころなしか僕の表情も柔らかくなった。ほんの少しだけセクシーな気もするが、たいした問題では無いだろう。さぁ、待ってろよブルーライン!
「座席鉄」は存在するのか?
ところで、様々な種類がある電車の座席だが、一体誰がどうやってそのデザインを決めているのだろう?
考えたことも無かったが、やはりその道の専門家に聞いた方が良いだろうと思い、鉄道研究会に所属している後輩に聞いてみた。
「詳しくない」と言いつつ、コメントが見切れる
一を聞いたら十が帰ってきた。さすがである。後輩曰く、
・車両の形式によって座席の生地が異なる
・私営鉄道はJRなどから流用しているパターンがある
・シルバーシートの語源は、優先席を区別するため余った銀色の生地を使ったから ← !
など、僕だけでは知り得ない情報がわんさか出て来た。しかし、写真の撮影をメインにする「撮り鉄」や、様々な路線の踏破を目指す「乗り鉄」が存在するのに対し、座席の柄を追い続ける「座席鉄」は見たことがないようである。もしかして、僕は知らず知らずのうちに新境地を開拓してしまったのかもしれない。
小粋なギャグもありがとう
なお、駅員さんにも聞いてみたところ、一つの路線に対していくつかの柄があるのが普通で、例えばブルーラインだから青を使おうなどといった意見を吸い上げつつ、上層部の人がデザイナーと話して決めているとのこと。「私たちは細かいことは分からないです」と言う表情が少し寂しそうだった。
いざ溶け込む
さて、いざブルーラインに乗り込もうと思ったところ、撮影を手伝ってくれていたO君が直前になって「こんな柄じゃない」と主張してきた。
必要以上に大げさな表情を作るO君
しかし座席の知識が深まった僕にとって最早それは問題ではない。君が指差しているその無地の柄は、数あるシートのうちの一種類に過ぎないのだ。
ほら来た
実際にホームに足を運ぶと、ちゃんとこの柄の電車が来たではないか。終点に到着するまで待ち、ついに座席Tシャツの効果を試す時が来た。
バン!
ババン!
ババァ〜ン!
どうだろうか。少しTシャツの色が明るいのは否めないが、ほぼ8割方溶け込めているではないか。ちなみに、全然リラックスできそうにないこんなポーズをしているのは、腕の白い部分をごまかすためである。完全に盲点であった。
しかし、星の数ほどある座席の種類だけ、座席Tシャツの可能性も広がっている。更にブラッシュアップさせ、誰もが電車に溶け込む風景に思いを馳せてみようではないか。誰もが好きな柄で電車に溶け込めば、通勤ラッシュも苦じゃない未来が待っている。
普段使いも出来るしね!
Tシャツが紡ぐ愛
完成したブルーラインTシャツを駅員の人に見せてみたところ、一瞬の沈黙の後「ありがとうございます」と言ってくれた。思いがけず、駅員さんの電車にかける情熱に答えてしまったのかもしれない。関係各所の皆さん、商品化の際には是非ご一報を。
僕が急に上着のジッパーをあけたから戸惑ったのかもしれない
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